ゆびさきから恋をする
 それでも大学を強引に中退したのに、仕事も二年と続かなかった事実を母には伝えられなかった私は地元には帰れず見つけた求人。

 (エンジニアリング?)

 よくわからないけれど、大手会社の子会社で派遣社員。その時は派遣のカテゴリーもいまいちよくわかっていなかった。研究職だからか時給がよくて飛びついてしまった。

 その時に気づけばよかったのだ。時給の意味に。

 時給は時給だ……バイトに毛が生えたようなもの。

 月給じゃない、時間給。
 
 働いた分だけもらえる給料……それはわかりやすいけれど年月が経つとだんだんモヤモヤが募っていった。


「あれ?」

 測定した値が検出されて思わず声が漏れた。

 (んん? 計算した値と全然ちがうな。なんで?)

 パソコン画面を覗き込み、自分で計算した紙を見比べつつ頭を捻っていたら声をかけられた。

「なに? 変なことなった?」

 たまたま共有パソコンで作業していた久世さんが私の声に反応してくれた。

「うーん……変なことというか」

 言い淀む私に腰を上げてパソコンを覗き込んでくる。

「……アルミか」

 高含有量のアルミの測定。濃度が濃いから希釈して測定をしていたのだが。

「1/5にしたのにな」

「1/5? これ単純に希釈間違いじゃない?」

「え?」

「1/20にしてんじゃない?」

 (え?)
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