ゆびさきから恋をする
Section5

鬼上司は気持ちを振り回してくる

 最近している仕事がうまくいっていない。失敗続きでさらに気持ちが落ち込んでいた。

 やり直し三回目のサンプルをようやく乾燥機に入れられたのが定時を回っていたのでなんとなく気が抜けた。

 乾燥まであと一時間、暇を持て余していた。

 暇だからといってボーッとも出来ず、何件か入っていたメールをチェックしていた。安全関係や転送メールが多いが報告書の承認のメールが目に留まる。

(なんの報告書だっけ)

 最近報告書を上げた記憶がない。それくらい今は失敗続きの試験しかしていなかった。

 報告書を開けて木ノ下さんと一緒にした試験だったのを思い出す。

(あぁ……これまだ報告されてなかったんだ)

 ぼんやりとその時の記憶を呼び起こす。

 先に試験を終えた私は、報告書の作成をどうしたらいいか尋ねると作っておいてほしいと頼まれた。言われた通り作成して先に値を記入し、電子印を押して木ノ下さんにメールで転送しておいた。
 
 納期はまだ先だし、木ノ下さんの結果が出ないと承認までは回せないが、自分の担当業務が終わるととりあえずホッとした。

 誰かと並行して仕事をするときは進捗が遅れると焦る分なおさらだ。特に相手は木ノ下さん、待たせたくなかったしミスがないようにしたかったから。
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