ゆびさきから恋をする
 二年ほど前から悩んで考えていたこの気持ちはまるで心の中で飼う風船みたいに、日を追うごとに膨れてはしぼんでを繰り返していた。

 今風船が大きく膨らんでいる。

 頑張れない、その気持ちが胸を占めているとき。負の波が襲ってきていると感情的になりやすいし、それにより精神的に不安定になる。久世さんがいつか本社に戻るかもしれない、その気持ちが空気を膨らますキッカケになった。

 一緒にいるほど辛くなる。

 仕事を任されるほど嬉しいのに、泣きたくなった。

 欲しかった信頼を自ら手放そうとする悔しさと虚しさから苦しくて逃げたくなった。

 そう、私は逃げるのだ。

 仕事にも、久世さんにも。その逃げたい気持ちが余計に悲しい。

 いろんなことを言い訳に結局は逃げる、その事実が情けない。


 開かれた報告書を閉じようとしたとき何気なく見た電子印。名前と一緒に日付が記載されるのでそれを見てぼんやりした思考が急にはっきりとする。その横に押された私の電子印も同じ日付で胸がドクンと鳴った。

(勝手に押し換えられた?)
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