ゆびさきから恋をする
Section6

鬼上司は甘く抱きしめてくる

 どこかでタイマーが鳴っている。

 遠くで聴こえてる機械音と自分の鼓動が徐々に重なっていつしか消えていくと、気持ちも変に落ち着いてきた。

 普段の態度や言葉からは想像できないくらい優しくて包み込むようなキス。

 頬をなでる熱い手が耳に首筋に触れるたびに胸が震えた。久世さんのあの長いゆびさきが私をなぞるの。
確かめるみたいに、くすぐるみたいに、そして包むみたいに……大切に。

 その触れ方が優しくて身を預けてしまう。このままもっと、ずっと……こうしていたい。そんな願いまで溢れ出してくる。

(だって……私……こんなのないもん)

 こんな風に男の人に抱きしめられてキスされるのは初めてなんだから。

 なにか言いかけようとすると唇を重ねられてなにも言えない。息さえも飲み込まれてだんだん呼吸が乱れ始める。抱きしめられた腕が腰を強く引き寄せるから吸い付くように体が密着した。

(絶対慣れてる……)
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