ゆびさきから恋をする
 どれくらいの時間こうしていたのか、やっと解放された口から吐息を吐く。

「は、ぁ……」

(息ができないほどのキスって本当にあるんだ……)

 まっすぐ見つめてくる瞳を息を乱しながらもぼんやりと見つめ返してそんなことを思った。

 あの長くてきれいな指がそっと目じりをなぞってくれる。

 涙はもう長いキスと一緒に止まってしまった。


 見つめられると恥ずかしくて、自分が今どんな顔をしているのか全く想像できなくて俯いたのに、それを許さないようにすぐに顎が持ち上げられてまた唇を重ねられた。

「んっ」

 声が漏れる。
 恥ずかしい、こんな自分は知らない。こんな甘い声、初めて出した。だからまた恥ずかしい。

 それでも何度か角度を変えられて甘いくちづけが繰り返されるから。その甘さに脳内がぼんやりしだすのを必死の思いで振り切った。

「……も……やめて」

 やめて、という言葉に自分が傷ついた。自分が言ったのに勝手な話だ。

 でも、ここでも勘違いしたくない。もう傷つきたくないんだ。

 これ以上触れられたら望んでしまう。こんなキスをされたら……。
 

 きっと私から求めるほど、抱きしめて離れたくなくなってしまうから。


「優しくなんかしないで下さい……そんな風にキスなんか、しないでください」

 なんなら突き放してほしい、そんな思いを込めて久世さんの身体をグッと押しのけると、抱きしめられていた腕の力がフッと緩んだ。

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