ああ、今日も君が好き。



買い物カゴを片手に精肉コーナーへ一直線の見吉さん。
そんな彼女の後ろ姿を見送った後、サーヤは小さな声でこう言った。



「どうよ、あたしのナイスアシストは?」

「完璧」

「柴ケンって本当分かり易いよね。てか、変態っぽーい」

「……悪かったな、変態で」

「あ、認めるんだ。それにしてもユッキーが柴ケンの連絡先を知らなかったとはね。そのくせ柴ケンの方はちゃっかり登録済みだし。しかも登録名が“女神”って……ふっはははっ、マジで変態じゃん!!」

「シッ!声がでけぇんだよ!見吉さんに聞かれたらどうしてくれんだよ!?」

「その時はその時だよ」

「他人事だと思って…」

「だって実際他人事だし。てか、柴ケン仕事しなくていいの?バイトクビになっても知らないよ」

「ピーマン補充してんのが見えねぇのかよ。これでクビになったらお前のせいだからな」

「人のせいにするのは良くないと思うなー」

「じゃあどっか行けよ」

「何その言い方?ユッキーには気持ち悪いくらいデレデレで優しいくせに何であたしにはそんな冷たいわけ?」

「気持ち悪いは余計だっつーの」



ふと周囲を見渡すと、見吉さんの姿は既に精肉コーナーになかった。
今日の夕飯は見吉さんが作るのだろうか。
肉を見てたってことは生姜焼きとか?
とんかつ、ハンバーグ、ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ…。
ああ、見吉さんに飯作ってもらえるなんて羨まし過ぎる。



安定の見吉さんワールドに入っていると、不意に横から声を掛けられた。



「おい、そこのガキんちょ!椎茸はどこにあんだよ!」



……出たな、うざい客その①。



てか、誰がガキだよ。

こっちは立派な成人だわ。



「……申し訳ありません。椎茸は本日の特売商品でしたので既に完売しております」

「売り切れだ?じゃあ今日のうちの晩飯どうすんだよ!炊き込みご飯に椎茸は必須だろうが!」

「申し訳ございません」



必須じゃねぇよ!

お前ん家の晩飯事情なんてどうでもいいんだよ!


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