黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「あのときの聖女に会ったら礼をしようと思っていた。命を救ってくれてありがとうと」
「いえ……陛下のお役に立てた、なら……よかった」
微笑んだつもりが頬はピクリとも動かない。どこも苦しくはないのに、体のどこもかしこも重くてまったく力が入らない。気をつけていなければ意識を手放してしまいそうになる。
「本音を言うと、あのときあのまま死んでしまえばよかったのにと思うこともあった」
「そんな……」
「戦争の英雄として死ぬほうが、死神でいるよりましだからな」
「陛下は死神なんかじゃありません!」
声を荒げたせいでゴホッとむせた。さっきから少ししゃべっただけで息が上がる。きっともうあまり長くもたない。
私がこのまま逝ってしまったら、陛下はきっとまた自分を『死神』と責めるのだろう。そんなのは嫌だ。
「お願いです、陛下。二度とそんなふうに、おっしゃらないで。私が死ぬのは、あなたのせいじゃ、ありません」
「死ぬなんて言うな」
狭くなっていく視界に、琥珀色の瞳だけがくっきりと映る。
夜空に浮かぶ満月みたい……。
あの夜バラ園で月を見上げたとき、陛下のことを思い出した理由がわかった。
最後の力を振り絞って手を伸ばし、陛下の頬に当てる。
「私は……陛下を……ルナルド様を、愛しています」
陛下は大きく目を見開いた後、私の手を握りしめられた。
「愛している、オディリア。逝かないでくれ」
唇が重なる。柔らかな温もりがじわじわと広がっていき、胸の中が満ち足りた気持ちでいっぱいになった。
自然とふふふと笑いがこぼれる。
あれほど『初夜だ初夜だ』と意気込んでいた頃の自分に、言って聞かせたい。『そんなもの、形だけではなんの意味もないのよ』と。
陛下の顔をもっとよく見たいのに、視界がかすんでいく。死がすぐそこに迫っているのを感じ、最後の力を振り絞った。
「陛下と、出会えて……よかった。陛下の幸せを……ずっと……願っており、ま……」
「オディリア……!」
陛下の悲痛な声が遠ざかっていき、意識が途切れた。
「いえ……陛下のお役に立てた、なら……よかった」
微笑んだつもりが頬はピクリとも動かない。どこも苦しくはないのに、体のどこもかしこも重くてまったく力が入らない。気をつけていなければ意識を手放してしまいそうになる。
「本音を言うと、あのときあのまま死んでしまえばよかったのにと思うこともあった」
「そんな……」
「戦争の英雄として死ぬほうが、死神でいるよりましだからな」
「陛下は死神なんかじゃありません!」
声を荒げたせいでゴホッとむせた。さっきから少ししゃべっただけで息が上がる。きっともうあまり長くもたない。
私がこのまま逝ってしまったら、陛下はきっとまた自分を『死神』と責めるのだろう。そんなのは嫌だ。
「お願いです、陛下。二度とそんなふうに、おっしゃらないで。私が死ぬのは、あなたのせいじゃ、ありません」
「死ぬなんて言うな」
狭くなっていく視界に、琥珀色の瞳だけがくっきりと映る。
夜空に浮かぶ満月みたい……。
あの夜バラ園で月を見上げたとき、陛下のことを思い出した理由がわかった。
最後の力を振り絞って手を伸ばし、陛下の頬に当てる。
「私は……陛下を……ルナルド様を、愛しています」
陛下は大きく目を見開いた後、私の手を握りしめられた。
「愛している、オディリア。逝かないでくれ」
唇が重なる。柔らかな温もりがじわじわと広がっていき、胸の中が満ち足りた気持ちでいっぱいになった。
自然とふふふと笑いがこぼれる。
あれほど『初夜だ初夜だ』と意気込んでいた頃の自分に、言って聞かせたい。『そんなもの、形だけではなんの意味もないのよ』と。
陛下の顔をもっとよく見たいのに、視界がかすんでいく。死がすぐそこに迫っているのを感じ、最後の力を振り絞った。
「陛下と、出会えて……よかった。陛下の幸せを……ずっと……願っており、ま……」
「オディリア……!」
陛下の悲痛な声が遠ざかっていき、意識が途切れた。