黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「皇后様、お食事の時間でございます」
「ありがとう」

 ベッドの上で体を起こし、メイドが持って来てくれたトレイを受け取ろうとしたら、横から手が延びてきた。

「あ……」

 トレイを奪った陛下は、ベッドサイドに腰を下ろすとスプーンを持つ。すくったスープをフウフウと息を吹きかけて冷まし、私の口もとに持ってくる。

「熱いから気をつけろよ」
「陛下……もう大丈夫ですので」

 ベッドサイドに座る陛下が困ったように眉を下げる。

「食べたくないのか? しっかり栄養を取らないと元気になれないぞ」
「いえ、あの、そういうことではなく――」
「ほら、ひと口だけでも」

 目の前のスプーンからしずくが垂れそうになっているのが見えて、反射的に口を開いた。口の中にカボチャの甘みが広がっていく。

「えらいぞ」

 頭をよしよしと撫でられ、うれしいような悔しいような複雑な気持ちになる。

「もう自分で食べられるのに……」

 目覚めたばかりのころは体が思うように動かず、水を飲むのにもひと苦労していたけれど、今はもうその必要はない。むしろずっと寝ていたせいで体がむずむずするくらいだ。早く動き回りたくてたまらない。

 それなのにいつまでも病人扱いは居たたまれない。〝ベッドで夜着〟という格好にも恥ずかしさが募っている。

「遠慮しなくてもいい。ロゼのときはこうして食べていたじゃないか」
「そっ……それは言わないでくださいませ」

 ロゼを私として脳内置換されると、羞恥に悶絶しそうになる。あのときは幼児だったけれど今は大人の女性だと陛下にわかってもらうには、いったいどうしたらいいのだろう。

< 103 / 114 >

この作品をシェア

pagetop