黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「そろそろ食事はきちんとテーブルで取りたいです」

 手始めに普通の生活を取り戻したいと遠回しに訴えてみる。
 本心を言えば、食事だけでなく普通にベッドから出る生活がしたい。欲を言えば外の空気も吸いたいけれど、一足飛びにそこまで要望しても通らない気がして、まずは第一歩にと控えめな希望を出してみた。

「まだだめだ」

 予想外に断られ「でも」と反論しかけたが陛下はそれすらも許さない。

「おまえにはまだ安静が必要だ。目覚めてから七日しか経っていないんだ」

 七日〝も〟経ちましたけど!

 声を大にしたいのをぐっとこらえる。この数日で同じようなやり取りを何度くり返しただろう。案の定、予想と同じセリフが返ってくる。

「あれから何日間眠っていたと思っているんだ。五日間もだぞ。今度こそこのまま目を覚まさないのではと何度思ったことか」

 陛下に最後まで心配をかけてしまったのは、本当に申し訳ないと思っている。けれどさすがに永遠にベッドにこもっているわけにはいかない。そろそろ少しずつでも体を動かしておかないと、足腰が弱ってしまいそうだ。

「お言葉ですが陛下。教皇様から『近いうちに目を覚ます』とお聞きになっていらっしゃったのでしょう?」

 昨日魔導鏡を通してお義父様に元気な顔を見せることができた。そのときに聞いたのだ。教皇からのお墨付きがあるのだから、そこまで心配しなくても大丈夫だったのでは?と思った。

「だとしても実際に目覚めるまでは安心できない」

 きっぱりと即答され、私は目をしばたたいた。
 そこまで心配してくださったのだと驚きと申し訳なさが入り混じったが、だからといっていつまでも幼児扱いは困ってしまう。いいかげん食事くらい自分で取れることを陛下にわかってもらいたい。
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