黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「黒髪の男の子も欲しいです」

 思いきって言ったはいいが、相当恥ずかしい。真っ赤になっているだろう顔をうつむかせたら、頬に手が添えられた。親指でスッと目もとをなぞられる。

「翡翠の瞳もいいな」

 のぞき込んでくる陛下の瞳が甘くきらめいている。自然と手が陛下の頬に伸びた。

「私は琥珀色が好きです」

 手を取られて指先に口づけられる。そのままコツンと額を合わせ、クスクス笑い合った。

「我が大聖女の希望を叶えられるよう鋭意励もう。幸い夜はこれからだ」
「え……」

 ちらりと窓に視線をやると長い陽が差し込んでいる。

 ま、まだ陽が沈む前だったなんて! 

 夜ですらなかったという事実に焦りに焦る。明るいうちからあんなことを……と思ったら、全身から変な汗が吹き出した。

「あ、あの、そろそろディナーのお時間では……」
「あとで部屋に運ばせよう」
「で、でも、カリーナが呼びに来るでしょうし」
「侍女頭には、今日はもう下がっていいと言っておいた」
「ええ!」

 部屋に入る前に会ったじゃないかと言われて、そういえば、と思い出した。
 あのときは緊張のあまり周囲に気を配れる状態ではなかった。

「さあ、もう黙って」

 背中に回る腕が締まると同時に、唇を塞がれた。

 この数か月を取り戻す勢いの陛下から濃密な愛を注がれて、月が空高く輝く頃、ようやく意識を失うように眠りに落ちる。
 夜風に乗って女神様の祝福の声が聞こえた気がした。



 皇帝ルナルド・ウィーザーは帝国に安寧と繁栄をもたらし、子々孫々に至るまで賢帝とたたえられた。皇帝のそばには常に、『帝国の女神』と呼ばれた大聖女オディリア皇后の姿があった。




 おわり
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