エリート医務官は女騎士を徹底的に甘やかしたい

「お腹に、傷があります」
「よし、すぐに見せろ」
「ええ、年頃の女によくそんな簡単に言えるわね」
「お前と俺の仲だろ、それに、隠すってことはそれなりに傷が深いんだろ。隠したって無駄だぞ」

 うう、バレてる。しぶしぶ自分の服を捲り上げると、ガイアは眉間に皺を寄せた。それもそのはず、右横の腹の部分に応急処置で包帯を巻いてはいるが、血が滲み出ている。

「もっとこっちに来いよ」

 ガイアがそう言って椅子ごと私を引き寄せると、器用に包帯をくるくると巻き取っていく。うわぁ、包帯に結構血が移っちゃってるんだな、なんて呑気なことを考えていると、ガイアは患部に両手をかざして治癒魔法をかけ始めた。ガイアの治癒魔法は、なんだかとてもあたたかい。患部にじんわりと温もりが伝わって、それがだんだん全身に巡っていく。

「よし、傷は完全に塞がった。痕も残ってない」

 そう言ってから、ガイアは私の横腹を指で優しくなぞった。

「この傷も、俺が跡形もなく消してあげられればいいんだけどな」

 そんな切なそうな顔しないでよ。ガイアの表情と言葉に、私の心はチクリと痛む。

「これはしょうがないよ。ガイアと出会う前の傷なんだし。これも、騎士としての勲章って思ってるからいいの」

 私がそう言うと、ガイアはそうか、と一言呟いて、名残惜しそうに私の横腹から手を離した。


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