最期の晩餐
 因みにこの日、隼人と隼人のお母さんは、隼人のお母さんと患者さんたちにボロボロに負かされたらしく、隼人から【悔しいです。父さんと一緒にトランプの練習しようと思う】というLINEを頂戴した。散々練習しまくった隼人と隼人のお父さんが翌日お見舞いに行くと、隼人のお母さんに「今日は麻雀をやりましょう。私の時間は限られてるんだから、トランプばかりやってられないわ」と言われ、ふたりの努力は儚く散った。そして、役の種類をあまり知らなかった隼人と隼人のお父さんは、やっぱり負けた。

 ここのホスピスは急性期病棟と違い、面会時間に制限がない。何時に来て、何時に帰っても良い為、隼人と隼人のお父さんは毎日やってきて、隼人のお母さんが寝る時間まで居る。

 さすがに隼人のお母さんも「お見舞いに来すぎじゃない? ちゃんと食べてるの? しっかり寝てる? 家のことは大丈夫なの? 荒れ放題だったりしないわよね?」と心配しだした。「心配しないで」と言う隼人に「心配よ。お見舞いに来てくれるのは凄く嬉しいんだけど、居過ぎなのよ。お父さんと隼人が長居すればするほど、心配で死ぬに死ねない」と隼人のお母さんが顔を顰めた。その言葉に「それはそれで好都合」と笑う隼人のお父さん。

 この幸せな時間がずっと続けばいいのに。と誰もが願うが、絶対に叶わないことを全員知っている。幸せとは、こんなに切ないものなのか。
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