【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
 ケーキの上に乗せてあるイチゴを見ると自然と笑みが込み上げてきた。

――さっき目を閉じて食べたアレは、あきらかにミニトマトだった。

 感触、砂糖と混じりあった酸味、香り……。

「今何食べたのか、分かった? 美味しかった?」と聞かれた時、ミニトマト以外には考えられなかった。ミニトマトと答えてしまうところだったけど、考え直し言葉をぐっと飲み込んだ。

由希くんが料理にミニトマトを忍ばせていた流れや、以前イチゴの鉢植えを持ちながら迷子になった時に言いかけた「イチゴ味ってミニトマト」という謎の言葉。そして、目を開けると、フォークに刺さったイチゴが目の前のお皿にあった。

 由希くんが求めている答えは――。

「美味しかったけど。食べたのは、イチ、ゴ?」と、棒読みしないように慎重に答えると、「ブッブーです。正解は、ミニトマトでした!」とはしゃぎながら答えて、説明までしてくれた。

 正直、砂糖をまぶしたミニトマトは人によってはイチゴの味かもしれないが、俺にとっては全くそうは思わなかった。だけど苦手な感じがせずに食べられたし、由希くんがイチゴ味だと言うなら、俺にとってはイチゴ味が正解だ。それに、一緒に育てたミニトマトだからきっと食べられた――。

「由希くん、まだミニトマトあるの?」
「ミニトマト? あるよ」
「美味しかったから、食べたい」
「本当に? 持ってくる」
「ありがとう。砂糖もお願いしていい?」
「もちろん!」

 由希くんは目を輝かせながら、足早に部屋から出ていった。俺は胸が温かくなった。

――そんなに急がなくてもいいのに。


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