【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
……

 顔を離したけれど、由希くんの目は閉じたまま。

「由希くん、もう目を開けても大丈夫だよ」
「あっ、本当に?」

 由希くんは目を開く。荒い呼吸をしていた。

「由希くん、大丈夫?」
「うん、呼吸を止めていたし、すごく緊張したから苦しくなっちゃった」
「由希くん――」

 目の前にいる由希くんの存在。愛おしさを通り越して切ない気持ちもやってきた。由希くんはやっぱり世界でひとりだけの、誰よりも大切な存在だ。

「由希くん、ゆっくり深呼吸して」と、俺は由希くんの背中をさすった。

「ありがとう、律くん」

 しばらくすると、由希くんの呼吸は落ち着いてきた。いつの間にか俺たちは手を繋いでいた。

「ねぇ、律くん。ケーキに砂糖をまぶしたミニトマトを乗せてみてもいい?」

 その組み合わせは合わなさそうな気がする。でも、実際はどうなんだろうと疑問を抱きながらも俺は「いいよ」と頷いた。

 由希くんは鼻歌を歌いながらケーキの上にミニトマトを置いた。俺は楽しそうな由希くんを見つめる。

 こんなに幸せで良いのだろうか。
 こんな未来が来るなんて、全く想像していなかった。

 並べ終えた由希くんがこっちを見る。

「どうぞ、食べてみて?」
「ありがとう」

 一口ケーキを頬張った。

「美味しい、かも?」
「本当に? 僕も食べてみよ」

 由希くんは一口食べると首を傾げた。

「ん? 美味しいのかなこれ?」

 顔を見合わせながら、俺たちは微笑みあった。

 今までで一番幸せな誕生日だった。心から生まれてきて良かったと、初めて思えた。

 由希くんの部屋の窓から見える夜空には、沢山の星が瞬いていた。


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