【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
 嫌われた日から月日が経ち、俺たちは中学一年生になった。しばらく何も変わらずに過ごしていたけれど、変化が訪れた。その日はいつもよりも空気が冷たい朝だった。学校に行くために家のドアを開けると、タイミングよく由希くんも同時に家のドアを開け、俺たちは目が合った。

「お、おはよう」

 勇気を出して挨拶をしてみた。すると目を一瞬しか合わせてはくれなかったけれど「おはよう」と、ふわりとした声で返してくれて。

――俺は由希くんに、ドキッとした。

「綿谷……」

もっと話をしたくて、呼び止めようとした。でも何を話せばいいのだろう。心臓の鼓動がどんどん早くなり、これ以上は何も話せなくなってしまった。呼び止められた由希くんは困った顔をしてうつむいた。ベージュのマフラーを両手でギュッと握りながら、フリーズしていた。

迷惑かなと考え、俺は早歩きでその場を離れた。歩きながら思い切り白い息を吐いた。そして冷たさに似合わない青空を仰いだ。

久しぶりに俺のために発してくれた声、困ったような表情……。由希くんを思い出すだけで、淡い桃色のような、不思議な気持ちになっていた。

そしてなぜかあの時、ギュッと心臓が締め付けられて、由希くんに対して初めてドキドキした。そしてそれからは由希くんが近くにいるだけでドキドキして心臓が苦しくなっている――。

挨拶を返してくれた。それだけで気持ちが跳ね上がるほどに嬉しくて、一日中由希くんの挨拶が頭の中でリピートし、その日は全てが調子よく過ごせた。それは、由希くんに嫌われていることを一瞬忘れるほどだった。



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