【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
*恋人編

***由希視点

 律くんと一緒に苗を植えてからあっという間に時間は過ぎていった。

ミニトマトはすくすくと育ち、身長を伸ばしている。今もちょうどしっかりと茎が立つように、支柱と茎を結ぶ紐を上の方につけ足したところだ。黄色い花や青い実も少しずつ増えてきている。他の花やきゅうりも元気に育っている。

 全てが順調に育っていて律くんとも仲直りできて、嬉しい毎日――。

 学校に行く前、畑の花や野菜に「元気に育つんだよ」と話しかけながら水をやるのが日課になっている。そしてひとつひとつの成長を見守り、異常はないか観察して律くんが家から出てくるのを待つ。

「由希くん、おはよう」
「律くん、おはよう」

 畑の中の世界に入り込み、どんなに夢中になっていたとしても、律くんの声だけはどんな時も僕の頭の中にすっと届く。きっと律くんの声は綺麗で透き通っているから、かな?

 今日も白い半袖ワイシャツの制服がよく似合う、爽やかな律くんが僕の隣に立つ。

「なんか、いつもより成長してない?」
「そうなの、よく気がついたね。たくさん雨降った日の次の日って、いっぱい成長してるんだよね。水いっぱい飲めるからかな」
 
 律くんも気がついてくれた――。
 一緒に細かいところまで観察してくれてるんだなと感じると、気持ちがはしゃいで踊り出す。

 最近は、毎日朝から日差しが眩しくて暖かい日が続いている。
 昨日は暖かい中、急に天気雨が勢いよく降った。

 成長するチャンスの時期だ――。

 成長と言えば……。

「律くんも身長伸びた?」
「そうなんだよね、よく気がついたね」

 律くんの口角が微妙に上がる。

――だって、律くんの全てが気になるから。

なんて言えるはずもなく。横に立っている律くんと話す時は、少しだけ顎をくいっと上げないといけない感じになるくらい、律くんは大きくなっていた。「僕だけ何も成長してないなぁ」とぼんやり呟くと「行こうか」と、言葉を遮るように律くんは言った。僕は「うん」と大きく頷いた。

 ふたり一緒にバス停に向かう。そして六時五十分のバスに乗った。律くんと歩く早朝の空気は透き通っていて、最高に気持ちがいい――。

☆。.:*・゜


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