【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
「じゃあさ、僕、料理が得意だから、野菜の料理を一品作ろうか?」

 僕がそう言うと、会話に全く興味を示さないままパンフレットを覗いていた律くんは勢いよく顔を上げてこっちを見てきた。その動きに驚く僕。

「おっ、いいなそれ。っていうか、料理が得意ってことは、もしかして綿谷の弁当って、自分で作ってるの?」 

 袴田くんが質問してきた。

「うん、そうだよ」
「いつも豪華で美味そうだよな。こないだ話題にもなってたわ。綿谷の料理、食べたいな。何作るんだ?」

 怒りの顔からコロッと表情を変え、笑顔になる袴田くんを筆頭に、ピリッとした空気は収まった。というか、話題になっていたって……。知らないところで噂になるの、ちょっと嫌だな。でも悪口ではなさそうだからいいのかな。でも嫌だな。袴田くんたちと一緒にお昼ご飯食べているわけではないのに、いつの間にお弁当覗かれていたんだろ。

 とりあえず、何を作ろうか考えるかな。みんなが好きそうで、野菜が入っているものが良いよね。

「野菜カレーで、いい?」
「カレーは、好きだ」

 様子を伺うように尋ねると、杉山くんがそう言った。

「カレー、好きな人は挙手を」と安倍くんが言うと、僕を含めた全員が手を上げた。律くんも――。

 変な空気が収まって良かった。そして遠足で料理するのも楽しみだな!

 僕はそっと細いため息を吐き、安堵した。



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