【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
 「バルーン可愛いね、ありがとう。部屋にあるパステルカラーの家具と色が合っていてオシャレ」

 律くんは部屋に入ると壁のバルーン飾りを見つけてくれて褒めてくれた。律くんの第一声が嬉しくて、気持ちはほぐれてきた。

「由希くんの部屋、久しぶりだな」
「律くんが僕の部屋にいるの、緊張する……まずは、どうぞ、座ってください」

 僕は両手を開き、どうぞどうぞとした。律くんは頷くと、口角を少し上げながらパステルピンクのローテーブルの前に座った。目の前の料理をじっと眺めている。カレーライスとミートソースパスタとローストチキン、うちで採れた、マヨネーズをつけて食べるきゅうりスティック。そしてバナナといちごのケーキ。

 僕たちは「いただきます」と同時に言うと、同時に食べ始める。一口ずつ味見をした律くんは「全部が美味い」と言ってくれた。

「良かった!」

 心の底から良かったと、思った。だって――。

「実はね律くん、カレーとミートソースにはトマト……」
「あっ、やっぱりそっか」

 僕が言い切る前に律くんは理解した。

「分かった?」
「うん、分かった」

 もしも僕たちを眺めている第三者がいたら頭上にクエスチョンマークが浮かび上がり、何が?となりそうな会話だったと思う。離れている期間は長かったけれど、仲が良かった時代もある幼なじみ特有の、幼なじみの僕たちであるから成り立ち、分かり合える会話だろう。自然と笑みがこぼれてくる。

「僕たちが育てたトマト、食べれたね!」
「そうだな、本当に美味しかった」

 律くんはふっと柔らかい声を出して微笑んだ。
 そう、料理の中にはうちのミニトマトが入っていたのだ。前に僕を祝ってくれていた時に作ってくれたオムライス、他にもケチャップの料理は食べていた律くん。ミニトマトは酸っぱさと感触が苦手だと言っていた。なら、こっそりとうちのミニトマトを料理に忍ばせればどうかな?と、真剣に悩んだ。僕の読みは当たったようだ。

 あっという間にケーキ以外を完食してくれた。律くんの胃の中には今、ミニトマトがいっぱい。僕たちが大切にしながら育てた野菜が律くんの栄養になり身体の一部になることが、なんだかワクワクした。

 だけど実は、作戦はまだ終わりではない。これから僕の選択が左右される、とあることを実行する。これが成功したら僕は今日、律くんに告白します!

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