チャラい社長は私が教育して差し上げます!
…………ブオン
エンジンが始動した!
会場中で「うぉー」という歓声が上がり、社長と私は人目もはばからず抱き合った。
「掛かった、掛かった!」
「が、待て。喜ぶのはまだ早い」
と社長は言った。
「どういう事?」
「エンジンストールしたら、ショーが台無しだ。やはり慣れたテストドライバーにしておくべきだったかな……」
「なんでエンストするの?」
「慣れてない佐藤さんだと、クラッチのミートに失敗するかもしれない。うちのクラッチはクセが強いんだ」
「なんでマニュアルなの?」
「斯波君の趣向だ」
斯波さんのバカー! なんでオートマにしないのよ!?
キキキキー
その時、『アラレちゃん』は派手にタイヤを軋ませ、走り出した!
「走った、走った! アラレちゃんが走った!」
社長と私は抱き合い、飛び跳ねて喜びを分かち合った。テストコースを疾走するツートンカラーのアラレちゃんの姿を、私は一生忘れないと思う。
ちなみに斯波さんがマニュアルシフトに拘ったのは、アラレちゃんが発進時に、タイヤを派手に軋ませたいかららしい。
「舞、俺はこの後、マスコミ対応とかでバタバタすると思う」
「うん、大変だね?」
「だから、その前に君にこれを渡したい」
そう言って、社長はスーツの内ポケットから何かの小箱を取り出し、私の手に乗せた。
「これは……?」
「開けてごらん」
小箱の蓋を開けると、それは魅惑的な光を放つ、ダイヤの指輪だった。
「舞、俺と結婚してほしい」
「直哉さん……」
私は嬉しくて、涙をじわっと溢れさせた。
「返事は?」
「もちろん、イエスよ?」
私は、この日を一生忘れないと思う。
「舞、俺の戻りが遅いからって、先に帰るなよ? 社長命令だ」
「承知しました!」
(おしまい)
エンジンが始動した!
会場中で「うぉー」という歓声が上がり、社長と私は人目もはばからず抱き合った。
「掛かった、掛かった!」
「が、待て。喜ぶのはまだ早い」
と社長は言った。
「どういう事?」
「エンジンストールしたら、ショーが台無しだ。やはり慣れたテストドライバーにしておくべきだったかな……」
「なんでエンストするの?」
「慣れてない佐藤さんだと、クラッチのミートに失敗するかもしれない。うちのクラッチはクセが強いんだ」
「なんでマニュアルなの?」
「斯波君の趣向だ」
斯波さんのバカー! なんでオートマにしないのよ!?
キキキキー
その時、『アラレちゃん』は派手にタイヤを軋ませ、走り出した!
「走った、走った! アラレちゃんが走った!」
社長と私は抱き合い、飛び跳ねて喜びを分かち合った。テストコースを疾走するツートンカラーのアラレちゃんの姿を、私は一生忘れないと思う。
ちなみに斯波さんがマニュアルシフトに拘ったのは、アラレちゃんが発進時に、タイヤを派手に軋ませたいかららしい。
「舞、俺はこの後、マスコミ対応とかでバタバタすると思う」
「うん、大変だね?」
「だから、その前に君にこれを渡したい」
そう言って、社長はスーツの内ポケットから何かの小箱を取り出し、私の手に乗せた。
「これは……?」
「開けてごらん」
小箱の蓋を開けると、それは魅惑的な光を放つ、ダイヤの指輪だった。
「舞、俺と結婚してほしい」
「直哉さん……」
私は嬉しくて、涙をじわっと溢れさせた。
「返事は?」
「もちろん、イエスよ?」
私は、この日を一生忘れないと思う。
「舞、俺の戻りが遅いからって、先に帰るなよ? 社長命令だ」
「承知しました!」
(おしまい)