チャラい社長は私が教育して差し上げます!
経営統合のタイムリミット、すなわち4ヶ月が過ぎた。

今日は、晴れて『ガッちゃん』お披露目の日だ。ただ、大きな問題がある。

「なんで60パーセントなのよ? ブランデーより10パーセントも低いのよ?」

廃油によるエンジン始動の成功率は、昨日の時点で60パーセントしか達成していないらしい。

「仕方ないだろ? 4ヶ月ではそれが限界だったんだから。今日さえ凌げば、商品化までには100パーセントを達成してみせるさ」

「本当に?」
「ああ、たぶん」

「”たぶん”じゃダメでしょ!」


『ガッちゃん』つまり新型エンジンの発表は、社を挙げて大々的に行う事になった。舞台はもちろん開発工場だけど、大勢の業界関係者と、テレビを初めとするマスコミが集まった。それは国内に止まらず、海外からも集まって来た。

今や『ガッちゃん』は、世界が注目している、と言っても過言ではなかった。

実演を担当するのは、私がかつて動画を撮った時と同じく、食堂の高橋さん、榊さん、斯波さんだった。ただし、テストドライバーは元F1ドライバーの佐藤さんという方にお願いしたらしい。

いつものテストドライバーさんは気の毒な気がするけど、マスコミ受けを狙ったためらしい。マスコミ受けと言えば、セクシーなレースクイーン数名に来てもらい、来場者に生ビールを配ったりした。

真夏で炎天下だから、生ビールは飛ぶように捌けたらしい。私も飲みたかったけど、業務中なので我慢した。

社長と私はもちろんのこと、来場者の全員が見守る中、斯波さんが『アラレちゃん』に、高橋さんが濾したばかりの廃油を給油した。

「頼む、エンジン始動してくれ……」

キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュ……

スターターの甲高い音が、静まり返ったテストコースに鳴り響いた。ブランデーの時より長いと感じるのは、私だけだろうか……
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