チャラい社長は私が教育して差し上げます!
ガッちゃん
翌朝、私は頑張って早く起きて、始業の2時間前に出社した。

ちなみに聡には、昨夜のうちにラインを送っておいた。『出勤が早くなったので朝ご飯は作れません。退勤も遅くなりがちだから、今後は自分のご飯は自分で用意してください』と。

聡に抵抗されるかなと心配したけど、返った返事は『りょ』の一言だけ。私は、拍子抜けした反面、ホッとした。

なぜなら、私と聡の繋がりは、今や聡にご飯を食べさせる事のみで、それを放棄したという事は、聡との関係は何も無くなった事になるからだ。

後は聡にアパートを出て行ってもらえば良いはずなんだけど、それは可哀想かなと思ってしまう。甘いとは解っているのだけど。


秘書室の扉は施錠されていたので、警備員さんにお願いして開錠してもらった。

制服に着替え、自分用のコーヒーをハンドドリップで淹れた。そしてコーヒーを啜り、コンビニで買った玉子サンドを頬張りながら、昨夜の事を考えた。

会社を救う”奇跡”を、私が起こす事は全くの不可能だ。かと言って、このままやる気のない会社や社長に流されるのは不甲斐ない。

秘書としての私に、何か出来る事はないだろうか。頑張り甲斐のある何かが。そう考えて得た結論。それは……

”チャラい社長を教育して差し上げる”、だ。

具体的には、神徳直哉さんを普通の社長さんにしてあげる訳だけど、それは会社や本人にとって、多少なりとも利益になるんじゃないかと思う。H社との経営統合に向けて。
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