チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「経営統合というのは名ばかりで、実質的にはH社によるM社の子会社化なの。その証拠に、持株会社を作るんだけど、H社が株式を100パーセント保有するそうなの。オッケー?」

「うちらの会社がH社の子会社になる、って事だけ解ったと思う」

「まあ、それで十分だけどね。そうなると、うちの会社はどうなると思う?」

「さあ……」

「社長以下、重要なポストは総入れ替え。そして大規模なリストラね。私個人の考えだけど、開発部が一番危ない気がする」

「どうして?」

「だって、H社とM社って、開発のコンセプトが似てるから、絶えずライバル関係なわけでしょ? 統合して仲良く共存って、有り得ないと思う。良くて縮小。最悪は潰されると思う」

「でも、それって、全部恵子の想像だよね?」

某評論家みたいな言い方になっちゃった。

「開発部の件は私の想像だけど、他は私だけでなく、社員みんなの想像よ」

「私は想像してないんだけど?」

「じゃあ、舞を除いた社員みんなの想像ね」

ガーン

「じゃあ、社長は真っ先に交代になるから、”繋ぎ”なのね?」

「そういう事ね」

私の箸がピタッと止まった。食欲が一気に失せてしまった。

「どうしてこんな事になっちゃったんだろう……」

「簡単に言えば、車が売れないからよ」

「売ればいいじゃない」

「それが出来ないからこうなったんでしょ?」

「経営統合しないとどうなるの?」

「倒産する」

ガーン

「じゃあ、処置なしなのね?」

「そうね。奇跡でも起きない限りは」

奇跡かあ……
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