チャラい社長は私が教育して差し上げます!
始業開始時刻を30分ほど過ぎた頃、社長がようやく出社して来た。私はすぐに社長のモーニングコーヒーを淹れ、それを持って社長室へ入って行った。

社長は椅子に座り、ノートPCを操作している。今朝の社長は、少しやる気があるみたいだ。

ただし、サングラスは掛けていないものの、服装は昨日と同じようなもので、おおよそ社長には相応しくない。社長どころか、ビジネスマンにあるまじき服装だ。これを何とかしないといけないな、と私は思った。

「おはようございます。こちらに置きますね」

私はそう言って、社長の右手の横で、邪魔にならない範囲で程近い場所にコーヒーをカチャリと置いた。

「ありがとう、舞ちゃん」
「社長、本日のご予定ですが……」

「何も無いよね?」
「はい。ですが……」

『少しは入れるべきではありませんか?』と言おうかどうしようか、私が迷っていたら、

「勝手に入れてないだろうな?」

社長は顔を上げ、私を睨みながらそう言った。低い声で、口調はガラリと変わり、表情は険しく、怖いけど凛々しいって感じ。

「そんな事はしてません」

「そう? おどかさないでくれる?」

社長の声は高くなり、元のチャラ男に戻った。何なんだろう、この人。

「では」

と言って社長に背を向け、立ち去ろうとしたのだけど、

「待て」

と社長に呼び止められてしまった。低い方の声で。

「はい。何か……」

振り向くと、社長はさっきと同じ、怖いけど凛々しい表情で私を睨んでいた。

「俺のメールをいじったのは、おまえだな?」
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