チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「私ですが、何か問題がありましたか?」

内心では怯みそうになりながらも、私は胸を張って毅然とした態度で応対した。

「勝手にいじってほしくない。やめてくれ」

「それは出来ません。秘書の重要な業務なので」

「どうしてもか?」
「どうしてもです」

「じゃあ、しょうがないよね?」

あ、チャラ男に戻った。もしかすると、戻ったのではなく、チャラ男になった、なのかな?

「社長にお願いなんですが……」
「お願い? 何かな?」

「どっちか、ひとつにしてほしいんです」
「と言うと?」

「チャラい社長か、怒り虫の社長か、どちらかひとつにしてほしいんです。疲れますので」

「舞ちゃんは、どっちがいいのかな?」

「どちらかと言えば、怒り虫の方ですかね?」

「わかった。そうするよ、舞」

すごい。一瞬でチャラ男から怒り虫に変わったわ。社長の特技かしら。

「どっちが”素”の社長なんですか?」

「こっちに決まってるだろ? 俺は女の子と接する時だけ、チャラ男になるんだ」

「なぜですか?」
「モテるからだ」

そうは思えないけどなあ。
ふと恵子が言った『頭の軽そうな女ばかり』という言葉を思い出し、なるほどなと思った。

「あの、お願いついでに、その服装や髪の毛を、何とかしていただけませんか?」

私は、社長がこの願いも聞いてくれるかと、期待したのだけど、

「だめだ」

即答だった。

「社長には、社長としての自覚はないのですか?」

「ない。1ミリも、ない」

愚問だったみたい。
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