チャラい社長は私が教育して差し上げます!
将棋と釣りの話は夕ご飯でも続き、私には理解不能な会話で盛り上がっていた。そして、私が知らない間に泊まる事になっていたらしく、父は嬉しそうに社長とお酒を飲み交わしていた。

お風呂に入り、隆から借りた寝間着を着た社長と私は、私の部屋のベッドで一緒に横たわっている。

「そろそろ寝ましょうか?」

「”やりましょうか”の間違いだろ?」

「え? ちょっと、ダメだって、ん……」

私は社長に口を吸われ、Tシャツの裾から手を入れられて胸を揉まれると、私の口から吐息が漏れだした。

「家族に聞かれちゃうから……」

「おまえが声を抑えれば大丈夫さ」

社長の舌が私の首筋を這い、喘ぎそうになるのを何とか堪えていたら、社長の動きがピタッと止んでしまった。

「あん。やめないで?」

と私がお願いしても、社長の反応が無い。社長の顔を覗いたら、彼はしっかり目を閉じ、規則正しい寝息を立てていた。

なんだ、寝ちゃったのか。

今日は疲れてるんだから、無理もないな。とは思うけれども、私は社長に腹が立った。取り残された私は、ひとり悶々として眠れなくなったからだ。

もう、社長のイジワル!


翌日、私達は朝食の後に帰る事になった。隆は、まだ暗い内に釣りへ出掛けたらしい。

私達を見送るため、外に出た両親は、R2020を見て目を丸くした。

「お世話になりました」

「また来てくださいね」
「舞をよろしくお願いします」

社長と両親が挨拶をし合い、私は両親に「じゃあね?」と言って車に乗り込み、私達は実家を後にした。

「ありがとうございました」
「え? 何が?」

「私の実家に来てくれて」
「ああ、そんな事……」

「私の家族と打ち解けてくれて、嬉しかった」

「舞のご家族って、みんないい人だな?」

「そうかなあ」
「フレンドリで羨ましかった。舞の性格がいい理由が、解った気がする」

「それって、褒め過ぎじゃない?」

「だな?」
「もう……」
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