チャラい社長は私が教育して差し上げます!
今はキッチンで母と夕飯の支度をしているところ。

「直哉さんは、肉じゃがはお好きかしら?」

やっぱり母は肉じゃがを作るらしい。母の得意料理だから。私のは、母の直伝ってやつだ。

「好きだよ。私が作ったら、美味しいって言って食べてたから」

「あなた達、一緒に暮らしてるの?」

「あ、バレちゃった? 事情があってそうなってるの。タワマンなのよ?」

「あら、いいわねえ」

手を動かしながら、母と色々な話をした。専ら直哉さんと会社の話だけど。

「今夜は泊まって行くんでしょ?」

「あ、そうだよね。遅くなるもんね。どうしよう。二人ともお泊りの用意はしてないのよ」

「問題ないでしょ? あなたは何とでもなるし、直哉さんには隆のスウェットとかを着てもらえばいいんじゃない?」

「そうだよね。後で直哉さんに聞いてみる」

夕ご飯をダイニングに運び終えると、私は直哉さん達を呼ぶべく父の部屋へ行った。そこには隆もいた。

直哉さんは、父と将棋を差しつつ、隆と釣りの話をしていた。

「やっぱりダム湖だと底釣りがメインになりますか?」

「他の奴はそうだけど、俺は宙の両ダンゴです」

「ほお、男らしいですね。あ、お義父さん、飛車を取っちゃいますけど?」

「や、それはうっかりした。待ったをしてもいいかな?」

「どうぞ、どうぞ。俺もダンゴ派ですね。セットは姑息で嫌いなんです」

という感じで、私にはちんぷんかんな会話を、二人とデュアルで交わしていた。直哉さんって、器用な人だな。

「社長。お取込みの中申し訳ありませんが、食事のお時間です」

「お、そうか。お義父さん、どうしますか?」

「ちょっと待ってくれ。あと一手だけ差したい」

「という事だから、少ししたら行くよ」

「承知しました!」

将棋はどうやら父が劣勢みたい。直哉さんって将棋が強いのね。直哉さんに弱点って無いのかな。根がチャラい事以外で。
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