【超短編】今更だけど。
僕はあえて気付かないふりをした。
「ねぇ、えーくん、好きだよ」
青く暗い、静かな水族館の中、何度目かの告白。
「……」
いつもなら、「ごめんね」って言うのに、この日は何も言えなかった。
暗くて見えなかったけど、きっと葵は頬を紅くして、勇気を振り絞って言ってくれたんだろうな。
それが、すっごく─────かわいいって思って、ちょっとだけ、愛おしかったから。
僕はまともに恋愛をしてこなかった。
部活のサッカーと、勉強でほとんどの時間を費やしたし、好きな子なんて出来なかったから。