タイプではありませんが


「だから営業の基本は?って聞いたの?」
「ん、なんのことかなぁ」
 ニヤリと笑う星野に楓はガックリと肩を落とした。

 諦めない。営業の基本だと話していた星野。きっと楓のことも諦めないのだろう。
 最後のデートの時、変な質問だとは思ったのだけど。
「山下、詰めが甘いよ」
 不敵に笑う星野に楓は苦し紛れに吐き出した。

「……タイプじゃない」
「見た目は、だろ?」
 やけに自信ありげにいう星野。
「俺は山下のこと、女性としか見ていないし、自分でいうのもなんだけど包容力もある方だよ」
 そんなこと。
「……知ってる」
「なら」
 星野の目が変わる。スマートでなんでもそつ無くこなす同期の顔から、一人の男として女を見る熱っぽい目。
「俺のものになってよ」

 あぁ、駄目だ。こんな目で見られたら。
 鍵が緩む。
 抑えていた想いが溢れてくる。
< 164 / 166 >

この作品をシェア

pagetop