嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
 実は遥臣は盗聴器の件を理恵子に相談していた。彼女の元夫は警備会社の取締役になっており、調査や引っ越しでは彼の伝手で信頼できる業者を紹介してもらったのだ。離婚後も良好な関係と聞いていたので頼みやすかった。

 ただ、その事実は美琴には伝えないように口止めしてある。彼女を怖がらせたくないからだ。

「そうだね、ありがとう。調査は続けてもらってるよ」

 頷いた遥臣は、理恵子にいろいろ重要な話を伝えそびれていたと気づく。

「そうだ、理恵子さん」

 続けようとした言葉は、廊下の角から顔を出した看護師の声に阻まれる。

「あーいたいた! 理恵子先生お帰りのところすみません! さっきの患者さんのお薬の件で、確認したいんですけどいいですか?」

「はーい、今行くわ。ごめん遥臣、なにか大事な話?」

「いや、大事だけど仕事を優先して」

 考えたら、立ち話でする内容はなかった。また改めて時間を作ればいいだろう。

「なにそれ、気になるわね」

 笑いながら看護師の方に足を向ける理恵子に軽く手を上げ、遥臣も病棟に向かった。
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