嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
「最高にいい表情しているね。でも、いい加減にしないと僕だって怒るよ。さあ、あっちに車待たせてあるから」

 智明の掌が美琴の二の腕を掴んだ。逃げようとしたが、恐怖で体に力がはいらない。

「は……離して!」

「いいから、来るんだ」

 細身の体にしては強い力に引きずられそうになった、そのとき。

「美琴‼」

 人気のない駐車場に大声が響く。白衣を翻し走ってくるのは遥臣だった。

「チッ……」

 智明が舌打ちすると同時に腕を掴む力が緩む。その隙を狙って思い切り身体を捻じる。今度は力が入り離れられた。

「遥臣さん!」

 駆け寄ってきた遥臣は美琴を庇う。

「……清香さんが警備員を呼んでくれている。君は中に入ってて」

 遥臣は智明を睨みつけたまま、美琴に声をかけた。

「でも」

「俺が話す。少し目つきがおかしいのも気になる」

 そう言われて、美琴はゆっくり距離をとる。

「また君か。どれだけ僕たちの邪魔をすれば気が済むのかな?」

 憎々しげに言葉を吐く智明。対して遥臣の声は平坦だ。

「こちらのセリフだ。どれだけ言い寄ったって、お前はとことん美琴に嫌われている」

「なんだと……」
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