嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
「……ああ、ごめん」

 彼は美琴の横に立つと、耳元で囁いた。

「あんまり君が綺麗だから見とれてしまった。ドレス、よく似合ってる」

 どうやらすでに婚約者としての演技は始まっているらしい。

(……こういうのにいちいちドキドキしていたら、最後まで持たないわよ)

 一瞬ドキリとしたものの、すぐに切り替えた美琴は、作り笑顔で応える。

「ありがとうございます」

「じゃあ、いこうか」

 エスコートするように、遥臣の掌がそっと美琴の背中に添えられた。

 パーティーは立食形式で、広いバンケットルームでは招待客が思い思いに食事や会話を楽しんでいた。

 遥臣と連れ立って会場に入った瞬間、周囲の視線が一気に向けられた気がした。彼は病院でパーティーに婚約者を同伴すると宣言したそうなので、皆、どんな女を連れてきたのか気になるのだろう。

 伸ばした背中に視線が刺さる。特に女性陣から。

「外科部長がこっちに来るから紹介する」

 遥臣がさりげなく耳打ちしてくる。さりげなく視線を向けると50代位の大柄な男性がこちらに向かっていた。

「わかりました」
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