嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
 大学生のとき、美琴はこういうイベントに興味がなかったし、実家が事業を手放してからそれどころではなくなり参加した経験がない。

 せっかく行かせてもらった大学。今思えば、もっと学生生活を楽しめばよかった。だからこそ妹と弟には普通の大学生活を楽しんでほしいと思っている。

 そんなことを考えながらたこ焼きの入ったパックの輪ゴムを外していると、遥臣のつまらなそうな声が聞こえてきた。

「しかし、いくら綺麗だからって、人の奥さんをナンパしようとするなんてありえないな」

 彼の顔は声と同様、憮然としている。

「綺麗だなんて、呼び込みのために女性のお客さんみんなに言ってるんですよ」

「……本当に自覚がないんだな。今日君がどれだけ周りの注目を浴びていたか」

 呆れ声で返され美琴はピクリと片眉を上げる。

「注目を浴びてたのは私じゃなくて遥臣さんですよ」

 今日の遥臣はロングスリーブTシャツにスキニーパンツ、ジャケットを合わせたカジュアルな服装。シンプルで清潔感のあるスタリングはモデル体型の遥臣に似合いすぎるほど似合っているのだ。
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