新・安倍晴明物語~泰山に舞う雪の花~

第2話(4)太一式祭

天慶二年(939)十二月十五日、平将門はからを強奪した。その後、国府を占領した将門は政庁に入り、周囲の四つの門を警固し、朝廷の除目の議を真似して関東諸国の国司を任命した。この時、将門は自らを新皇と称した。

朝廷は一刻も早くこの兵乱を鎮めるために、あらゆる手段を講じる。彼らは山々のにの法を修させ、にはを祈った式神を霊験あらたかな神社に祀らせたのである。

陰陽寮もまた、朝廷から将門の儀式を行うよう命じられた。のとの文武兼はに呼び出される。

「兵乱を平定するために、最もよろしい祭祀を申せ」

武兼が前に出て意見を述べる。

「がもっともよろしいでしょう」

こうして、武兼は将門をしたを太一式盤の下にはさみ、調伏を祈願した。世間の人々は天地の神々が将門の追討に力を貸してくれることを祈り、晴明もまた玉屑に皆の祈りが届いているだろうかと思いを馳せた。

暇そうにしている玉屑を見かねた泰山府君は冥界の経典を渡し、勉強するように促す。そこには、生前に罪を犯して地獄に落とされた罪人たちの末路が記されていた。あまりに凄惨な内容だったので玉屑は吐き気を催し悪趣味だと非難するが、泰山府君は「罪を犯したのだからこれくらい当然だ」と意に介さない。さらに泰山府君は研修と称して玉屑を地獄に連れていき罪人が罰を受けている光景を見学させようとしたが、玉屑は断固として拒否する。泰山府君は玉屑に「いずれ炳霊とともに重罪人に対して刑を執行してもらう」と告げ、彼女は途方に暮れる。



陰陽師たちの祈りは神々に届かず、東西の兵乱は依然として続いていた。藤原忠平は賀茂忠行を召して将門調伏のために効果的な祭祀を問うた。忠行は密教の修法である白衣観音法を提案した。この修法は北斗七星の化身である白衣観音を祀ることで兵乱鎮圧を祈る修法である。忠平は忠行の提案を聞き入れ、もし効験があれば褒美を授けることを約束する。
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