この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 誰もいない休憩室のベンチに慶介と並んで座る。

 静かな空間に慶介と二人きりになると、高ぶっていた感情が落ち着いてきたのか、今になって深い悲しみを覚える。あれだけの敵意を向けられると、明日香とてきつい。

 小さくため息をこぼせば、慶介にそっと肩を抱き寄せられた。

「っ、誰かに見られたら」
「この時間に、ここに来る人はいないから」

 慶介の腕はしっかりと明日香の肩をつかんでいる。離すつもりはないようだ。

 明日香が体の力を抜き、彼に寄りかかるようにすれば、慶介は優しく明日香の髪を撫で始めた。

「明日香はなにも悪くない」
「うん……でも」

 明日香自身もそう思ってはいる。それでもこんなことになってしまえば、どうしたって落ち込む。

「気にはなるか。それが明日香だからな。嫌な気持ち吐き出していいぞ」

 矢沢に対して思うところはあっても、わざわざそれを口に出したくはない。吐き出してしまえば、自分が醜くなってしまいそうだ。

 明日香の代わりに慶介がはっきりと言ってくれたのだから、それでもう十分。

 明日香はふるふると首を横に振った。

「大丈夫。慶介が庇ってくれたから」
「そうか。明日香のそういうところは好きだけど、心配になる。頼むから、自分の心を大事にしてくれよ」
「うん。でも、本当に大丈夫だよ。慶介がいてくれるから」

 本心からそう言えば、髪を撫でる慶介の手が一層優しくなった。
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