この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
第一章 偽りの言葉と仮初の恋
1. 腐れ縁
関東圏内ながらも、広い敷地に建つ一つの施設。三階建ての白い建物は一見学校のようにも見えるが、出入りするのは子供ではなく大人ばかり。中に入れば、白衣を着た人らが真剣な表情をして各々の作業に勤しんでいる。
ここは調味料を中心に商品を展開するミコメ食品の研究所。新商品の開発から既存商品の改善、さらには安全性の研究に至るまで、商品に関わる様々な研究開発を行っている施設だ。
その施設の中のとある一室。第三開発室に集まっているのは、商品開発部のメンバー。様々な調味料やスパイスが並んだ調理台を囲み、あれやこれやと議論を重ねている。
中でも同期である如月明日香と穂高慶介は、先ほどから周囲のことなどお構いなしで、思ったことをオブラートに包まずに言い合っている。
「おい、なんでもかんでも入れるな。味がぼやけるだろ」
「味を見てから言ってよ。ちゃんと計算して入れてるんです!」
頭ごなしに否定され、明日香はムッとして言い返す。
明日香の頭の中では計算式が組み立てられていて、おおよその味の想像がついている。ちゃんと調和は取れているはずだ。
しかし、慶介は明日香を小馬鹿にしたような表情でなおも否定的なことを言ってくる。
「その計算が雑なんだよ」
「っ! 誰かさんはえらく真面目に計算してるものねー。それじゃあ、面白みのない味しか生まれないっていうのに」
「珍味しか作れないより遥かにマシだろ」
「はあ!?」
もはや議論ではなくただの悪口になっている。
「おい、お前ら、喧嘩するならよそでやれ」
先輩に叱られ、明日香と慶介は声を揃えて「すみません」と口にする。
明日香がしゅんとして項垂れる一方、慶介は少しも気にしていないようで、マイペースに調合作業を続けている。
ここは調味料を中心に商品を展開するミコメ食品の研究所。新商品の開発から既存商品の改善、さらには安全性の研究に至るまで、商品に関わる様々な研究開発を行っている施設だ。
その施設の中のとある一室。第三開発室に集まっているのは、商品開発部のメンバー。様々な調味料やスパイスが並んだ調理台を囲み、あれやこれやと議論を重ねている。
中でも同期である如月明日香と穂高慶介は、先ほどから周囲のことなどお構いなしで、思ったことをオブラートに包まずに言い合っている。
「おい、なんでもかんでも入れるな。味がぼやけるだろ」
「味を見てから言ってよ。ちゃんと計算して入れてるんです!」
頭ごなしに否定され、明日香はムッとして言い返す。
明日香の頭の中では計算式が組み立てられていて、おおよその味の想像がついている。ちゃんと調和は取れているはずだ。
しかし、慶介は明日香を小馬鹿にしたような表情でなおも否定的なことを言ってくる。
「その計算が雑なんだよ」
「っ! 誰かさんはえらく真面目に計算してるものねー。それじゃあ、面白みのない味しか生まれないっていうのに」
「珍味しか作れないより遥かにマシだろ」
「はあ!?」
もはや議論ではなくただの悪口になっている。
「おい、お前ら、喧嘩するならよそでやれ」
先輩に叱られ、明日香と慶介は声を揃えて「すみません」と口にする。
明日香がしゅんとして項垂れる一方、慶介は少しも気にしていないようで、マイペースに調合作業を続けている。