この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 そうして二人寄り添ったまま明日香のアパートの前まで着けば、いよいよ離れるときが訪れる。

「落ち着かないかもしれないけど、ゆっくり休め」
「うん……」

 繋いでいた手がゆっくりと離れる。慶介は明日香を見つめたまま動かない。きっと明日香が中に入るまで、ここで見送ってくれるつもりなのだろう。

 それならば、慶介が早く家に帰れるようさっさとアパートの中に入るべきだ。そう思うのに、体はそれとは真逆の行動を取る。

 慶介との距離を一歩詰め、慶介の肩にこつんと額を当てて彼に身を寄せた。

「ごめん。少しだけ」
「ん、いいよ」

 優しく彼の腕に包み込まれる。とても、とても心地いい。

 先ほどの事件からは少し時間が経ち、恐怖心がわずかばかり薄れたからか、今はその抱擁に深い安心感と強いときめきを覚える。

 いわゆるつり橋効果というものだろうか。それとも慶介への特別な想いがあるからなのだろうか。

 明日香はまだその答えを持ち合わせていないが、いずれにせよ、慶介との触れ合いが心地いいことには変わりない。

 本当は慶介をこのまま引き止めてはいけないとわかってはいるが、今は怖いことがあったのだからしかたないと言い訳をして、しばらくの間、その抱擁に浸っていた。
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