この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
 明日香の涙が止まり、もう一度落ち着きを取り戻すと、二人はゆっくりと離れる。

「心配だから今日は真っ直ぐ帰ろう。まだあの男がいるかもしれないから」
「……うん」

 男の存在を思い出し、不安な表情を浮かべれば、慶介が明日香を安心させるように優しく微笑む。

「大丈夫だ。家まで送るから安心していい」
「え、でも」
「仕事なら明日やるから心配するな」

 少し申し訳ないとは思うものの、一人でいるのは怖いから、今は彼の好意に大人しく甘える。

「ありがとう。本当はまだ怖いから、そばいてくれると嬉しい」
「ああ、明日香が家に帰り着くまで離れないから安心しろ。ただ、一度会社に戻ってもいいか? 荷物全部置いてきたから」

 改めて慶介の姿を見てみると、確かに彼はなにも持っていない。社員証も首からぶら下げたままの状態で、よほど慌てて駆けつけてくれたのだとわかる。

 明日香のために動いてくれたことが嬉しくて、胸がじんわりと温かくなった。

「急いで来てくれたんだね。ありがとう」
「明日香が大事だって言っただろ。ほかに優先すべきことなんてなにもないから」
「慶介……ありがとう。ねえ、私も一緒に会社まで戻っていい?」
「当たり前だ。絶対に一人にはしないから」

 その言葉通り、慶介は明日香が自宅に着くまでの間、ずっと離れずそばにいてくれた。会社の外では明日香の手を握り、絶対に離さないでいてくれた。
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