この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「明日香ちゃん、私から見ても少し元気がないように見えるわ。今日は早めに帰りなさい」
「……でも」

 明日香はわかりやすくしょんぼりとしている。

「そんな顔しないの。これサービスしてあげるから」

 明日香と慶介の前に茶碗蒸しが置かれる。おそらく元気がない明日香を気遣って作ってくれたのだろう。

「えっ、ありがとうございます。私、静香さんの茶碗蒸しも大好き」

 明日香の顔にやわらかい笑みが浮かぶ。

「知ってるわ。だから、用意したの。今日はそれ食べたら帰りなさい」
「……そうします」

 残念そうではあるものの、ちゃんと微笑んで頷いている。明日香のその様子に、慶介は少しだけ安堵した。

「穂高くん、明日香ちゃんのこと送ってあげてね」
「もちろんです」

 はっきりと頷く。もとよりそのつもりだった。

 それから杉崎を後にした二人はともに明日香の自宅へと向かった。

 明日香を送り届ける中、慶介はずっと彼女の様子を気にかけていた。心配でたまらなかった。

 一方の明日香はというと、不安や弱音は口にしないものの、繋いだ手にはいつもよりも少しだけ力が入っていて、やはりなにかを抱えているのだとわかった。

 それでも慶介に甘えてこようとはしない。そのことにひどく歯がゆい思いをするが、だからといって寄り添うことをやめようとは思わない。甘えられないなら、むしろこちらから寄り添おう。

 そう思っていた慶介だが、寄り添うだけではなく、もっと早くにしっかり向き合ってやればよかったと、すぐに後悔することとなった。
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