この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「あら、嬉しい。ありがとう、明日香ちゃん。今日は明日香ちゃんの好きなカレイもあるわよ。食べる?」
「え、カレイあるんですか! 食べます!」

 興奮して宣言すれば、慶介は呆れを通り越し、感心したような表情でつぶやく。

「如月のその食い気はもはや才能だな」
「ちょっと人を大食いみたいに言わないでよ」
「誰もそんなこと言ってないだろ。食べる量じゃなくて、食への執着がすごいって言ってんだよ。如月が勧めるものは絶対に外れないしな」

 食への執着がすごいのは事実だ。食い意地が張っているのとは違うのだが、食への探求心はとても強い。だからこそ、ミコメ食品に就職したのだ。

 だが、それはなにも明日香だけではない。慶介も食へのこだわりはなかなかのものだ。様々な食材の味や香りをわかっているだけではなく、成分や効能まで熟知しており、新商品の開発時にはその知識を存分に活用している。

「それは穂高もでしょ。私よりいろいろ詳しいじゃない」
「如月ほどじゃないよ」

 なぜか謙遜している慶介はこの会話に興味をなくしたのか、黙って食事を再開している。

 明日香もとりあえずはおいしい料理を堪能しようと、それ以上その会話を広げることはしなかった。
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