お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています
紗良は戸棚からレトルトのカレーを取り出し、無言で鍋に湯を沸かし始めた。食器を準備して、温めたレトルトパックをお皿に注ぎ、ご飯と一緒にテーブルへ並べる。

その一部始終を見ていた橘が、腕を組んだまま淡々と言った。

「……40点ですね」

紗良は思わず吹き出した。あまりに遠慮のないその評価が、これまでの橘からは考えられないほど率直で、妙に可笑しかった。

「点数つけられただけマシか……」と呟くと、橘は立ったまま真顔で続けた。

「冷蔵庫に何もないようですが、買い出しに行かれるか、ネットスーパーを利用されては?」

「――その手があったか」

紗良はカレーを一口食べながら、タブレットを手に取った。ネットスーパーのアプリを開き、あまり手間のかからなさそうな食品をカートに放り込んでいく。

すると、橘が小さくため息をついた。

「そんな、出来合いのものやレトルトでは栄養が偏ります」

「今月は忙しくて、ご飯作る暇なさそうだし」と言い返すと、橘はすぐさま重たい言葉を落とした。

「超過勤務を禁止されたくないなら、自炊してください」

「……私が何時間働くかは、私が決めるから。あなたには関係ないでしょ」

そう睨むように言い返すと、橘は一歩も引かずに答えた。

「私にその裁量がないと……お思いですか?」

低い声と静かな目線が、紗良の背筋をぞくりと冷やした。

(……父と、まだ他に密約を交わしてるな)

紗良はカレーを食べる手を止め、心の中で小さく舌打ちした。
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