両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
迫られるって……それは納得できた。
唯冬がモテないわけがない。

「そ、そうね」

そう答えるのが精一杯だった。

「俺がどれくらい好きなのか、わかってないな。千愛は」

そう言って三人に向き直った。

「ピアノが弾けなくても俺にとっては唯一の存在だ。傷つけることは許さない」

「結朱さんはいいの?そんなこと言ったら。結朱さんに言いつけてやる!」

「どうぞ、お好きに」

唯冬から笑われた三人は顔色を変えた。

「虹亜、帰りましょう」

逃げるように両親達は帰っていった。
私には一度も帰ろうなんて両親は言ってくれなかったなと思いながら、その背中を見送った。
その私の隣には唯冬がいて、そっと手をつないでくれた。
二人になると唯冬は私の涙をぬぐった。
私は自分が泣いていたことにやっと気づいた。

「俺が好きなのも結婚したいのも千愛だけだ。なにがあってもそれだけは変わらない」

なにがあってもという言葉に今日の『仕事』が関係しているのだと気づいた。
その手を握り返して黙ってうなずいた。
手からはお互いの体温が伝わってきたけれど、胸は苦しいままだった。
それはきっと私達が乗り越えなければならないことがまだあるということの証だった。

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