両親と妹はできそこないの私を捨てました【菱水シリーズ①】
「これは返しておくわね」

雑誌を返すと桜田さんははーいと軽い返事をして受け取った。
スマホを見て、すぐに文字を打ち込んだ。
『焼きもちなんてやいてませんから』とメッセージを送るとすぐに返ってきた。
『焼きもちをやく千愛も可愛いよ』
ずさっと書類の中に埋まった。
ぱらぱらと書類が宙を舞って、私の頭の上に紙がのった。

「雪元さんっ!?」

相手が強すぎた。
なにを言っても愛の言葉を囁いてくるんじゃないだろうか。
恐ろしい……

「な、なんでもないの。ちょっとね」

「頭の上に書類がのってますよ」

紙をどかし、散らばった紙を集めた。
ちらりとスマホの画面を見るとコンサートの日の予定が書いてあった。
唯冬でなく、私の予定が。

『服を用意したから、当日それを着て会場にくること。マネージャーの宰田(さいだ)が迎えにきて会場まで送ってくれるからマンションで待機していて』

コンサートに行きたいって言ったけど、宰田さんに迎えにきてもらうほど厚遇しなくてよかったのに。
むしろ、そっと後ろのほうの席で聴けるだけで十分だった。

「過保護なんだから」

「先輩、彼氏と仲直りですか?顔がにやけてますけど」

静かに机に伏せて顔を隠したことは言うまでもない。
お願い、少しは見てみぬふりをして。
そう思わずにはいられなかった。


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