あんたなんかキライ。僕は愛してる
あんたなんかキライ。僕は愛してる

           高山 南寿

泣き腫らした瞼。放心したような瞳。それなのに、唇をきゅっと結び、気持ち口角を上げた君の顔が忘れられない。

その瞳は悲しみや痛みを宿している。

つかの間の逢瀬。

もう終わりにしようと何度となく別れても、別れ切れなかった。

でも、疲れきった君は本当に別れると決めたんだね。

まだ二十二歳の君にそんな表情をさせたのは、この僕だ。

結果として、楽しい時間より苦しい悲しい時間が多くなったんだね。

僕は、あの時の僕は何にも分かってなかった。

いや、今もわかっているだろうか。



僕は若くて、とても綺麗な君が好きだったんだ。

今も思っているのは、君のことじゃなくて、君との思い出に恋しているんだ。

傷つけあったことも忘れて、いい思い出だけにすがりついてるんだ。

君をすごく傷つけた。

あの嫌な別れ方をしたことも、忘れてしまった。

今も残る気持ちは、未練だ。

長い未練だ。
< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop