恋はリハビリ中!(マンガシナリオ)

#1 ラッキーアイテムは車

 「キキーッ グシャッ!」

 〇急ブレーキ音と破裂音。

恋「まさか…嘘でしょ。」

 〇ハザードがカチカチと音を立てるクルマの運転席。
 ルームミラーを見ていた恋は青ざめる。

恋「ヤバイ、ヤバイ…!」

 ◯慌てて後ろを振り返ると、荷台の窓越しに通りがかりの赤髪の男子と目が合う。
 赤髪男子は目を丸くして驚いた顏をしている。

 恋は車のハンドルにガックリと頭をもたれる。

恋(やらかした!
  人生初の物損事故…なんて日だ‼)

 ♢

 〇恋が通う医療大学の駐車場。
 辺りがうす暗くなって駐車場のポールライトの白い光が点灯し始めた頃。

恋「どうしよう!」

 〇白の枠線の後ろに停車していた黒のセダン車。
 その左ライトに恋の若葉マークがついた軽自動車のリアバンパーが、見事に突っ込んでしまっている。


恋(暗くて黒い車が見えなかった…のは言い訳にならないか。
 ただの思い込みによる後方不注意だよね。)

 〇セダン車の運転席には誰も居ない。

恋(昔からこうなんだよね、私って。)

 ◯恋は青ざめて暗くなった空を仰いだ。
 
 【恋モノローグ】
 出かけた瞬間にカラスのフンが頭に落ちてきたり、目の前で限定のケーキが売り切れたり、部活の大会前に大怪我をしたり。
 貧乏くじを引きやすいというか要領が悪いというか、とにかくいつもツイていない。

恋(神さま、私は前世でそんなに悪いヤツだったんですか?)

「コンコン」

 ◯運転席の窓を軽く叩く音。
 恋が横を見ると、オーバーサイズのスウェットパーカーにワッペンが付いたぶかぶかのデニムを履いた男子が車の中を覗き込んでいた。

恋「あ、さっきの赤髪男子…。」

 〇ジェスチャーで窓を開けろと言っている。

恋(よく見たら同じ学科の碓井礼央だ。
  いつの間にこんなに派手な髪色にしたんだろう。)

 〇慌ててパワーウインドーを下げようとして、後部座席の窓を下げてしまった。

恋(わわ、運転席のスイッチはどれだっけ。)
 
 〇やっと運転席のウインドーを下げると、礼央が落ち着いた声音で話しかけてきた。

礼央「葉奈乃さん。
 とりあえず、ギアをパーキングに入れて停車したら?」
恋「パーキング?
 あっ、ありがとう。」

 〇恋は汗ばむ左手でギアを掴んで一番上に引き上げた。

恋(危なかった。ココが坂道だったら車が動いちゃうよ!)

 〇恋が車から降りると、背の高い礼央が身を屈めてセダンのライトの様子を見ていた。

礼央「バックに入れるときにアクセルを踏み過ぎたの?」
恋「ううん。ただの不注意。
 運転に慣れてなくて。」
礼央「それもあるだろうけど、この車、黒すぎじゃね?
 夕闇に紛れて見づらいよな。
 どんだけ高い車なんだよ。」

 〇まるで鏡面のように磨き上げられた艶やかな黒いボディのライトについた醜い傷。
 恋はガクガクと震える足に立っていられなくて座り込んだ。
 まだ免許取り立ての大学生にも、これはヤバイとひと目で分かる。
 
恋(このライト一つで幾らくらいするんだろう?
  医療大に入るだけでもたくさんお金を使わせているのに、これ以上パパやママには迷惑をかけられないよ…。)

礼央「大丈夫?」

 〇礼央が心配そうに声をかけてくれる。
 見た目はやんちゃそうだけど、優しい気づかいに救われる。

礼央「このナンバーをスクショして大学の事務員に聞けばもち主が分かると思うよ。
 俺も一緒について行こうか?」  

 〇恋は力なく首を横に振る。

恋「ひとりで行く。やっちゃったのは私だから。」
礼央「もし話が大きくなったら俺が証言するよ。」

 〇そう言うと礼央はポケットから出した携帯の画面にプロフィールURLを出した。

礼央「困ったことがあったら教えて。これ、俺の連絡先スクショして。」
恋「ありがとう。もしかしたらお願いするかも。」

 〇礼央が立ち去るのを見届けてから、恋はスマホの画面を切り替える。
 画面には今日の占いがポップアップされている。
 【今日の星座占い…みずがめ座さんは一位♡ ラッキーアイテムは車だよ♪】

恋「ッ…ありえない!」
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