恋はリハビリ中!(マンガシナリオ)
#9 炎上
〇恋が食堂に入った途端に騒めきだす生徒たち。
仁王立ちで入り口に立っていたひまりが、すぐに恋の肩を押して廊下の人通りが少ない自販機の横に連れ出した。
恋は押されている背中越しにひまりを見ようとする。
恋「なになにッ、どしたの?」
ひまり「ちょっとマズイことになったね。」
恋「何が?」
◯ひまりは苛立たしそうにスマホショルダーからスマホを取り出す。
ひまり「アンタこれ、見てないの?」
恋「チラッと。私と星先生がつき合ってるとか何とか。」
ひまり「ちゃんと見なさい。」
〇ひまりが大学のSNSに投稿された何枚かの写真を指でズームして見せてくれた。
黒いメクサスに乗る男女の写真。
画質が悪いけど、間違いなく恋と星先生だと分かる。
恋「やだ!」
〇恋がその場に凍り付き、一瞬間が空く。
恋「ツーショットじゃん♡ しかもこの日の私、かなり盛れてる!
この写真送って‼」
ひまり「じゃないでしょ! どー見ても悪意のある切り取り方されてるのよ、この投稿‼」
〇写真に添付されている文章『大学講師S・Hの黒い裏の顔』『援交! 単位が欲しくて…呆れた女子大生K・H』
恋「まるで芸能人のゴシップ記事みたい! よくこんなウソばっかり書けるよね。」
ひまり「感心してる場合じゃないって。コイツは恋と星先生をハメようとしてるんだよ! コメ欄の件数を見てよ。」
〇恋と星を批判するコメントがすでに100件を超えている。
のんきにしていた恋も、ようやく事の重大さに気づいて青ざめる。
恋「いったい誰が? 私は要領は悪いしツイてない女だけど、誰かに恨まれる覚えはないよ。」
ひまり「もしかして星先生の狂信的なファン?
先生は可愛いルックスだし、隠れファンは多いんじゃないかな。」
〇恋は実習先で星先生に迫っていたジェシーの姿を思い出したが、すぐに頭を横に振る。
恋(違う。彼女は陰湿なことをするタイプじゃない。)
恋「アカウント名は?」
ひまり「どうせ裏垢でしょ。」
恋「いったい誰が⁉」
ひまり「匿名だしすぐに調べるのは難しいんじゃないかな。
とりあえず騒ぎが落ち着くまで先生とのリハビリは休んだら?」
◯授業中も噂話は止まらず、居心地の悪い思いをする恋。
【恋モノローグ】
どこの誰がこんなことを!?
私たち、手も握ったことない上に治療のための仮想恋愛なだけなのに!
こんなの…許せなーいッ!!
♢
〇ひまりの言うように星先生には会わない方がいいと思い、恋はSNSの投稿写真の件をビデオ通話で伝えた。
それぞれの家の部屋。
スクショしたSNSの投稿を確認した星先生が唸る。
星「たまたま私と葉奈乃さんが車に乗るところを目撃したにしては、ずいぶん悪意のある投稿ですね…。」
恋「はい。でも恨まれる覚えもないんですけどね。」
星「いや、すみません。私が大学の生徒と講師という立場を甘く考えていたのかもしれません。
人によってはこの投稿のように下心があってつき合っているように見えるということでしょう。」
恋「でも、それは先生のアレルギーを治すためで…!」
星「人には表面的な事しか見えないし、その中身を一人ひとりに説明するのは難しい。
結果的に葉奈乃さんに迷惑をかけるなら、もう二人きりで会うのはやめましょう。」
恋「そんな…!」
〇恋は必死に星を説得する。
恋「私たち、何も悪いことをしていないじゃないですか。
こんなことでリハビリを止めるなんて、私は嫌です!
先生が女性アレルギーを治して好きな人に告白するまで、諦めたくありません‼」
〇驚いた顏をした星が、柔和な表情を見せる。
星「ありがとう、葉奈乃さん。
今でも君が、高校生のときのままの一生懸命な君で良かった。」
恋「自分、不器用なだけです。」
星「不器用が誰かの励みになるなら、それは君の最大の武器だよ。」
〇星先生の言葉にほわほわした気持ちになる恋。
星「私も真剣に向き合います。」
◯パソコンのキーボードを叩く星先生。
「ピコン」
恋のスマホに受信の着信音が鳴り、星先生が授業に使う評価ノートのような表を送信してくる。
星「リハビリでは患者さんの状態を把握するために検査をたくさんしますよね。
この問題もあらゆる角度から見定めて評価することが解決への糸口なんじゃないかな?」
恋「ヨッシャ! やってみましょう!」
〇恋と星先生はお互いの交友関係を評価ノートに書いてみたり、投稿された時間やいいねをしている周りの人物のアカウントから犯人を推理してみることにした。
そこで星先生が気がついた。
星「大学のSNSにはパスキーが必要だから関係者しか入れないんじゃないかな。」
恋「じゃあ、犯人はこの大学の関係者に絞れるってことですよね?
先生スゴイ! もう解決ですね!!」
星「うーん、大学の関係者は何百人と居るんだけどね。」
恋(そんな…。
せっかく犯人に近づいたと思ったのになぁ。)
星「葉奈乃さんは私たちのことを誰かに話した?」
恋「私たちが恋愛リハビリをしていることを知っているのは、ひまりと礼央くらいです。」
恋(でも、礼央が私を恨む理由は無いよね?
ひまりも…。)
◯恋は息を飲んだ。
恋「あ!」
◯ひまりが昔、星先生のことが好きだったと言っていたことを思い出す。
【恋モノローグ】
あの時のひまりは私が星先生を好きだと騒ぎすぎて、先生への気持ちはフェードアウトしたと言っていた。
でも、もしもそれが嘘だとしたら?
恋(親友を疑いたくない…でも。)
恋「先生、もし先生の親友が自分を裏切っていることを偶然知ったら、そのことを本人に問い詰めますか?
それとも知らないフリをして適当にやり過ごしますか?」
星「難しい問題だね…心当たりでもあるの?」
〇下唇をかみしめて頷く恋。
星「関係性の深さにもよるけど、私だったら自分の気持ちはハッキリ伝えると思います。
優しく接しているだけじゃ友達じゃなくてただのお客様だから。
もしそれが原因で壊れるような関係なら、それまでの人ですよ。」
仁王立ちで入り口に立っていたひまりが、すぐに恋の肩を押して廊下の人通りが少ない自販機の横に連れ出した。
恋は押されている背中越しにひまりを見ようとする。
恋「なになにッ、どしたの?」
ひまり「ちょっとマズイことになったね。」
恋「何が?」
◯ひまりは苛立たしそうにスマホショルダーからスマホを取り出す。
ひまり「アンタこれ、見てないの?」
恋「チラッと。私と星先生がつき合ってるとか何とか。」
ひまり「ちゃんと見なさい。」
〇ひまりが大学のSNSに投稿された何枚かの写真を指でズームして見せてくれた。
黒いメクサスに乗る男女の写真。
画質が悪いけど、間違いなく恋と星先生だと分かる。
恋「やだ!」
〇恋がその場に凍り付き、一瞬間が空く。
恋「ツーショットじゃん♡ しかもこの日の私、かなり盛れてる!
この写真送って‼」
ひまり「じゃないでしょ! どー見ても悪意のある切り取り方されてるのよ、この投稿‼」
〇写真に添付されている文章『大学講師S・Hの黒い裏の顔』『援交! 単位が欲しくて…呆れた女子大生K・H』
恋「まるで芸能人のゴシップ記事みたい! よくこんなウソばっかり書けるよね。」
ひまり「感心してる場合じゃないって。コイツは恋と星先生をハメようとしてるんだよ! コメ欄の件数を見てよ。」
〇恋と星を批判するコメントがすでに100件を超えている。
のんきにしていた恋も、ようやく事の重大さに気づいて青ざめる。
恋「いったい誰が? 私は要領は悪いしツイてない女だけど、誰かに恨まれる覚えはないよ。」
ひまり「もしかして星先生の狂信的なファン?
先生は可愛いルックスだし、隠れファンは多いんじゃないかな。」
〇恋は実習先で星先生に迫っていたジェシーの姿を思い出したが、すぐに頭を横に振る。
恋(違う。彼女は陰湿なことをするタイプじゃない。)
恋「アカウント名は?」
ひまり「どうせ裏垢でしょ。」
恋「いったい誰が⁉」
ひまり「匿名だしすぐに調べるのは難しいんじゃないかな。
とりあえず騒ぎが落ち着くまで先生とのリハビリは休んだら?」
◯授業中も噂話は止まらず、居心地の悪い思いをする恋。
【恋モノローグ】
どこの誰がこんなことを!?
私たち、手も握ったことない上に治療のための仮想恋愛なだけなのに!
こんなの…許せなーいッ!!
♢
〇ひまりの言うように星先生には会わない方がいいと思い、恋はSNSの投稿写真の件をビデオ通話で伝えた。
それぞれの家の部屋。
スクショしたSNSの投稿を確認した星先生が唸る。
星「たまたま私と葉奈乃さんが車に乗るところを目撃したにしては、ずいぶん悪意のある投稿ですね…。」
恋「はい。でも恨まれる覚えもないんですけどね。」
星「いや、すみません。私が大学の生徒と講師という立場を甘く考えていたのかもしれません。
人によってはこの投稿のように下心があってつき合っているように見えるということでしょう。」
恋「でも、それは先生のアレルギーを治すためで…!」
星「人には表面的な事しか見えないし、その中身を一人ひとりに説明するのは難しい。
結果的に葉奈乃さんに迷惑をかけるなら、もう二人きりで会うのはやめましょう。」
恋「そんな…!」
〇恋は必死に星を説得する。
恋「私たち、何も悪いことをしていないじゃないですか。
こんなことでリハビリを止めるなんて、私は嫌です!
先生が女性アレルギーを治して好きな人に告白するまで、諦めたくありません‼」
〇驚いた顏をした星が、柔和な表情を見せる。
星「ありがとう、葉奈乃さん。
今でも君が、高校生のときのままの一生懸命な君で良かった。」
恋「自分、不器用なだけです。」
星「不器用が誰かの励みになるなら、それは君の最大の武器だよ。」
〇星先生の言葉にほわほわした気持ちになる恋。
星「私も真剣に向き合います。」
◯パソコンのキーボードを叩く星先生。
「ピコン」
恋のスマホに受信の着信音が鳴り、星先生が授業に使う評価ノートのような表を送信してくる。
星「リハビリでは患者さんの状態を把握するために検査をたくさんしますよね。
この問題もあらゆる角度から見定めて評価することが解決への糸口なんじゃないかな?」
恋「ヨッシャ! やってみましょう!」
〇恋と星先生はお互いの交友関係を評価ノートに書いてみたり、投稿された時間やいいねをしている周りの人物のアカウントから犯人を推理してみることにした。
そこで星先生が気がついた。
星「大学のSNSにはパスキーが必要だから関係者しか入れないんじゃないかな。」
恋「じゃあ、犯人はこの大学の関係者に絞れるってことですよね?
先生スゴイ! もう解決ですね!!」
星「うーん、大学の関係者は何百人と居るんだけどね。」
恋(そんな…。
せっかく犯人に近づいたと思ったのになぁ。)
星「葉奈乃さんは私たちのことを誰かに話した?」
恋「私たちが恋愛リハビリをしていることを知っているのは、ひまりと礼央くらいです。」
恋(でも、礼央が私を恨む理由は無いよね?
ひまりも…。)
◯恋は息を飲んだ。
恋「あ!」
◯ひまりが昔、星先生のことが好きだったと言っていたことを思い出す。
【恋モノローグ】
あの時のひまりは私が星先生を好きだと騒ぎすぎて、先生への気持ちはフェードアウトしたと言っていた。
でも、もしもそれが嘘だとしたら?
恋(親友を疑いたくない…でも。)
恋「先生、もし先生の親友が自分を裏切っていることを偶然知ったら、そのことを本人に問い詰めますか?
それとも知らないフリをして適当にやり過ごしますか?」
星「難しい問題だね…心当たりでもあるの?」
〇下唇をかみしめて頷く恋。
星「関係性の深さにもよるけど、私だったら自分の気持ちはハッキリ伝えると思います。
優しく接しているだけじゃ友達じゃなくてただのお客様だから。
もしそれが原因で壊れるような関係なら、それまでの人ですよ。」