雨と妖精に導かれて ──御曹司CEOからの溺愛ラビリンス
【第38章『幸福のサイン、永遠に』】
4月26日、東京湾。
夜の水面は漆黒のベルベットのように静まり返り、月明かりがゆるやかに波を撫でていた。
豪華クルーズ船「LUNA BELLE」は、煌びやかな灯りを纏ってゆっくりと進んでいた。
船上デッキには、ドレスアップした仲間たちが集い、華やかな音楽とともにグラスを傾けている。
「……出産前祝いって、こんなに盛大にやるものなんですね」
美里は、白いフリルのついたマタニティドレスをそっと撫でながら呟く。
船の風が、彼女の髪とリボンをふわりと舞い上げた。
「企画したのは帝我だからな。張り切るなって方が無理だ」
泰雅は隣で笑い、彼女の肩を包み込むように寄り添った。
その瞬間、船のアナウンスが流れる。
『皆さま、まもなく“特別な夜空”が始まります。上を、見上げてください』
乗客たちがいっせいに空を見上げた。
そして──
ひときわ高く上がった花火が、真夜中の空に大輪を咲かせた。
が、その軌跡は普通の花火ではなかった。
次々と打ち上がる炎の線が交差し、やがて夜空にひとつの文字を描き出す。
「……“愛”?」
美里が、息を呑む。
それは、鮮やかな赤と白の軌跡で夜空に大きく浮かび上がった、“愛”の一文字だった。
「“愛”の花火……」
美里の声は震えていた。
夜空に煌めくその文字は、たった一文字なのに、言葉にならないほど多くの意味を宿していた。
信頼、約束、祈り、そして──未来。
帝我は船の後方デッキで、仲間たちの歓声を背にして、満足げに腕を組んでいた。
「……いい演出だったろ? 特注でプログラミングさせた。お前たちの未来の“幸運の灯台”だ」
泰雅が、照れくさそうにそれに応じる。
「……やりすぎだと思ったけど、正直、感動した」
帝我はニッと笑う。
「次は、命名式も演出するぞ。すでにプランは5つある」
「……勘弁してくれ」
そんなやり取りを背に、美里はもう一度、空を見上げた。
光の残像が消えていくなかで、ふと、彼女の耳に優しい囁きが届く。
《“愛”は、いつまでも消えないわ。たとえ夜が深くなっても、君の中で灯っている限り》
妖精たちの姿が、光の粒となって舞っていた。
それは、これまでに重ねた日々のすべてが“ひとつの形”になった証のようだった。
泰雅が、美里の手を取り、そっと指先にキスを落とす。
「ありがとう、美里。君がそばにいてくれるだけで、俺の人生はずっと満ちている」
「……私も。あなたがいてくれるだけで、世界がやさしく見える」
波の音がふたりの言葉に寄り添い、夜空の“愛”の文字は、ゆっくりと光の粒となって船上に降り注いだ。
【第38章『幸福のサイン、永遠に』 終】
夜の水面は漆黒のベルベットのように静まり返り、月明かりがゆるやかに波を撫でていた。
豪華クルーズ船「LUNA BELLE」は、煌びやかな灯りを纏ってゆっくりと進んでいた。
船上デッキには、ドレスアップした仲間たちが集い、華やかな音楽とともにグラスを傾けている。
「……出産前祝いって、こんなに盛大にやるものなんですね」
美里は、白いフリルのついたマタニティドレスをそっと撫でながら呟く。
船の風が、彼女の髪とリボンをふわりと舞い上げた。
「企画したのは帝我だからな。張り切るなって方が無理だ」
泰雅は隣で笑い、彼女の肩を包み込むように寄り添った。
その瞬間、船のアナウンスが流れる。
『皆さま、まもなく“特別な夜空”が始まります。上を、見上げてください』
乗客たちがいっせいに空を見上げた。
そして──
ひときわ高く上がった花火が、真夜中の空に大輪を咲かせた。
が、その軌跡は普通の花火ではなかった。
次々と打ち上がる炎の線が交差し、やがて夜空にひとつの文字を描き出す。
「……“愛”?」
美里が、息を呑む。
それは、鮮やかな赤と白の軌跡で夜空に大きく浮かび上がった、“愛”の一文字だった。
「“愛”の花火……」
美里の声は震えていた。
夜空に煌めくその文字は、たった一文字なのに、言葉にならないほど多くの意味を宿していた。
信頼、約束、祈り、そして──未来。
帝我は船の後方デッキで、仲間たちの歓声を背にして、満足げに腕を組んでいた。
「……いい演出だったろ? 特注でプログラミングさせた。お前たちの未来の“幸運の灯台”だ」
泰雅が、照れくさそうにそれに応じる。
「……やりすぎだと思ったけど、正直、感動した」
帝我はニッと笑う。
「次は、命名式も演出するぞ。すでにプランは5つある」
「……勘弁してくれ」
そんなやり取りを背に、美里はもう一度、空を見上げた。
光の残像が消えていくなかで、ふと、彼女の耳に優しい囁きが届く。
《“愛”は、いつまでも消えないわ。たとえ夜が深くなっても、君の中で灯っている限り》
妖精たちの姿が、光の粒となって舞っていた。
それは、これまでに重ねた日々のすべてが“ひとつの形”になった証のようだった。
泰雅が、美里の手を取り、そっと指先にキスを落とす。
「ありがとう、美里。君がそばにいてくれるだけで、俺の人生はずっと満ちている」
「……私も。あなたがいてくれるだけで、世界がやさしく見える」
波の音がふたりの言葉に寄り添い、夜空の“愛”の文字は、ゆっくりと光の粒となって船上に降り注いだ。
【第38章『幸福のサイン、永遠に』 終】