センセイは透明感ハンパない
構内をひとまわりしたらお腹が減った。蒸し暑さが増している。先生が、俺を再び日傘の中に招き入れてくれる。赤い門の前で。
「なぜ」
「俺、もっと勉強しなくちゃ」
「喝を入れてほしいのね」
「えぇ」
「何語で?」
「日本語で」

先生はしばし何かを考えているようだった。俺はドキドキしながら先生の言葉を待った。
と、

やわらかいものがふ、と、唇に触れた。
「本気でやれ。
勉強も、恋も」
(!?)

先生は身をひるがえし、すたすたと駅の方へ向かう。ラベンダー色のワンピースの細い背中。ブルーの日傘とのコントラスト。(綺麗に直っているすそ)
「はっ!!」

しばらく意識をなくしていた俺は、ようやく正気に戻って先生の後を追いかける。キスされた。キスされた。先生にキスしてもらった!! やったー!!
「先生、ありがとうございます!!」
「何が」
「先生、俺、頑張ります!!
勉強も恋も!!」
「うん」

先生が小さな花のように笑って、俺を日傘の中に入れてくれた。

「ワンピース、ちゃんと直って良かったです」
「ありがとう。きみの応急処置が早かったから」
「先生、どこかでお昼食べませんか」
「良いね。美味しいところに案内するよ」
「ありがとうございます!!」
よっしゃー、デートじゃー!!

「きみって単純で可愛いね」
先生がくすくす笑う。小鳥がさえずるように。
「それ、きみの長所だよ。大事にしてね」
(うう。
あいつとおんなじこと、先生にも言われた……)

アスファルトが照り返しで耀いている。水気を重く含んだ風が、街路樹の濃い匂いを日傘の中にも届けてくれる。
「きみってさ」
「はい」
「古いもの好きだよね」

日傘のブルーが濃くなった気がした。透明な蜜の香水が濃くなった気がした。


2025.05.03
蒼井深可 Mika Aoi
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