センセイは透明感ハンパない
「誰かに流されて大学受験するのもアリだよ。大学でいろんな出会いがあるよ」
怒られるかと思った。先生はあっさりしていた。
「大学は選択科目も多いしね。気まぐれで選んだ科目に夢中になるってのもあるし」
「それは先生の経験談?」
先生は、ミステリアスな笑みを浮かべた。

「この間の物理のテスト、惜しかったね。もうすぐ100点だった」
「はい」
「この問題はできてる。こっちはできなかった。同じ種類の問題だってわかるよね?」
「はい」
「じゃあ、いっしょに解いてみよう」
6畳の部屋に勉強用のテーブルとセミダブルベッドを押しこんでいる。先生用の椅子は仕事が忙しい姉の部屋から借りる。服や教科書はクローゼットの中だ。タブレットに書きこまれる数字が綺麗。先生の書く字は美しい。そして、
(かき氷の透明な蜜みたいな良い匂いが先生の髪からする!!)
勉強中、先生はヘアアクセサリーでくるくると長い髪をまとめる。その器用さと指や腕のしなやかさに、俺はついぽうっと見とれてしまう。
「すぐに解けるよ。やってみて」

先生の言葉は魔法の言葉だ。本当に難問がすぐに解けてしまう。

「先生は頭が良いから、なんでもすぐできそうですよね」
5分休憩の間、俺は先生にそう言った。
「俺には才能ないから」
「何語で叱られたい?」

意味がわからなかった。ただ、先生は無表情で俺を見ていた。
「え」
「何語で喝を入れてあげようか」
ときめいた。なぜか、そこで。
しかし、俺がわかるのは日本語とほんの少しの英語だけ。
「あ、あえての、
フランス語でお願いします」

「Je ne pense pas que tu es stupide mais tu ne fais jamais des efforts.
Tu dois sérieusement penser de ta vie plus en plus. Je t'aide.
Je suis sûre que tu es très talentueux」

何を言われているのかさっぱりわからなかったけど、心に染みました。
スマートフォンに録音して何回も聴きます。
(フランス語良いなー)
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