蜜味センチメンタル
「つーかさ、思わね?あの那色が誰かの写真を待ち受けにするとか、マジで末期。完全に恋の病」
その言葉に、羅華は返す言葉を見つけられなかった。
胸の奥で、じんわりと何かが溶けていく。くすぐったくて、でも少し苦しい、不思議な感情が静かに広がっていく。
嵐はそんな羅華の反応を面白がるようにニヤリと笑い、くるりと踵を返す。
「じゃ、俺そろそろ行くわ。女待たせてるし」
軽やかに手を振りながら、数歩進んだところで嵐はふと立ち止まり、振り返った。
「じゃあまたね、おねーさん。那色に愛想つかした時には、俺とも遊んでね」
ふざけたような笑みのまま、片目でウインクをひとつ。彼はそのままネオンの光に照らされた街の雑踏へと、ひらりと溶けていった。
取り残された羅華は、まだその場に立ち尽くしていた。
耳に残る「待ち受け」「ガチ恋」「恋の病」——どれも冗談みたいな言葉ばかりなのに、なぜだか胸に深く響いてくる。
——……ほんとに、そう思ってくれてるのかな…
けれど、その答えを確かめる場所はもうわかっていた。
冷たい風が頬を撫でる。それなのに、胸の奥はほんのりとあたたかかった。