蜜味センチメンタル
そう言いながら、羅華はキッチンカウンターの隅に置いたレシピ本をちらりと隠す。
揶揄うように言ったけど、内心ではバレンタインのことで頭がいっぱいだった。
——何がいいかな。那色くん甘いものはなんでも好きって言ったけど……
那色に似合うラッピング。好きそうな味。驚いてくれる表情。
そんなことを考えていると、自然と頬がゆるんでいた。
「……何か楽しいこと考えてます?」
「えっ、ばれてる?」
「なんか、顔がほわっとしてました」
「ふふ、まだ内緒だよ」
那色が笑う。
その笑顔を見るだけで、こんなにも心が温かくなるなんて。
——あの日々が嘘みたいに、今は穏やかだ。
そのあとは、朝食を食べて、手をつないで出かける。
まだ空気は冷たいけれど、指先から伝わる熱が心地よくて、ただ歩いているだけなのに、なんでもない週末が宝物みたいに感じられる。
——……チョコレート、やっぱりサプライズにしよう
冬の風が頬を撫でたけれど、羅華の心はすでに春の予感で満ちていた。